マンションの長期修繕計画は、将来の大規模修繕工事の実施などマンションを維持していくために必要となる費用を見極めることで、必要な修繕工事がおこなえないなどのリスクを回避するために重要なものです。また、長期修繕計画の見直しにより将来の修繕積立金の不足を早期の段階で認識することで、管理コストの見直しなどに管理組合が取り組むよいきっかけとなります。管理費からの支出コストを削減することで、余った資金を修繕積立金に充てることができ、修繕積立金の値上げや、大規模修繕工事のさいの一時負担金が発生するリスクを減らすことができます。できるだけ早期の段階でマンション管理士事務所などに支援を求め、長期修繕計画の見直しや管理コストの削減に取り組むことが重要です。

マンションの長期修繕計画とはメンテナンスの計画案

長期修繕計画というのは、簡単に言うと、マンションのメンテナンスの計画案のことを指します。たとえば外壁塗装工事はマンションの竣工から12年目に実施して、その金額は○○万円、エレベーター設備は25年目にリニューアル工事を行い、その金額は××万円‥これをマンションの建築や設備のあらゆるものを網羅していってその金額を一つ一つ合算していきます。

そうすると、向こう25年、または30年といった長期間にわたって、マンションの機能水準を維持するために、トータルで一体どれくらいお金が必要になるのか把握できます。この計画案が長期修繕計画と呼ばれるもので、長期にわたってマンションの機能を維持するための、とても重要な指標となります。

長期修繕計画の適切な周期とは‥!?

ところで、さきほど向こう25年、または30年というように、具体的な数字を示しましたがこれは、マンションの管理に関する所管官庁である国土交通省が、マンションの長期修繕計画作成に関するガイドラインを作成しており、そこから引用した数字です。また、マンション管理標準指針においても、ほぼすべての修繕工事項目を含むことができる30年程度を目安としています。これは、新築時の計画期間を25年程度とすると、工事費が多額である給排水管やエレベーターのリニューアル工事などが含まれないことから30年程度としているわけです。長期修繕計画を作成する場合には30年程度の計画期間で作成することが望ましいでしょう。マンション管理は何十年といった将来を見据えて、取り組むことが大切です。

<マンション管理標準指針・計画期間>
■計画的に修繕工事を行い、その経費として修繕積立金を安定的に徴収するためには、その根拠となる計画の期間はできるだけ長期とし、予定される修繕工事がすべて設定されていることが望まれます。しかしながら、計画の作成時点で数十年先の劣化状況や工事費を予測することはその精度が問題となります。
したがって、工事費が多額である外壁等の修繕工事の修繕周期が12年程度ですので、外壁等工事の2回分を必ず含む期間として、計画期間は、作成・見直しの時点から「25年程度としている。」を「標準的な対応」としています。
■しかし、新築時の計画期間は、25年程度とすると、工事費が多額である給水・排水設備工事や昇降機設備工事などが含まれないことから、ほぼすべての修繕工事項目を含むことができる30年程度としています。(計画期間が30年の場合でも、住戸の玄関ドアや窓のサッシなどの建具の更新工事などは含まれない場合があります。)

マンション管理センターの長期修繕計画作成サービスで安価に長計を作成する!

公益財団法人マンション管理センターでは、「長期修繕計画」の作成とこれに基づく「修繕積立金の額」を算出するサービスをおこなっています。管理組合が長期修繕計画の作成を専門家に依頼するさいには、マンション管理士事務所や設計事務所に発注するより安価にご利用いただけるのではないでしょうか。ただし、現地での調査・診断を行っていませんので、建物・設備の経年劣化の進行状況等は考慮していません。管理組合の予算に余裕がある場合には現地調査を行える専門知識をもったマンション管理士事務所や設計事務所等に依頼するほうが良いでしょう。
マンション管理センターの長期修繕計画作成・修繕積立金算出サービス

(2016年5月11日現在)

(1)マンション管理センター 登録管理組合の場合 2棟まで1棟毎に 各13,000円 (3棟目以上1棟毎に各8,000円)
(2)マンションみらいネット 登録管理組合の場合 同上 同上 同上
(1)(2)以外の管理組合 同上 各20,000円 (同上 各12,000円)
管理組合以外 同上 各30,000円 (同上 各18,000円)

長期修繕計画で想定される工事費の元手‥「修繕積立金」

マンションの計画修繕工事費の費用としては、区分所有者が管理組合に毎月納めるお金(修繕積立金)がその原資となります。
つまり、長期修繕計画で「費用」と言った場合、この修繕積立金を合算したもの、それが長期修繕計画に載っている工事費の金額に相当します。
同じように区分所有者が毎月、管理組合に納入する費用であっても、マンションの日常の管理に要する費用に充てられる「管理費」と「修繕積立金」分別して管理する必要があります。

<マンション管理標準指針・管理費と修繕積立金の区分経理>
■マンションの良好な居住水準を維持していくためには、外壁塗装工事、屋上防水工事、給・排水設備工事といった大規模修繕を計画的に行っていく必要があります。大規模修繕工事を実施するには、多額の費用を要し、これを修繕時に一度に徴収するとなると、各区分所有者の負担が重くなり、実施すべき工事を延期又は中止しなければならなくなる事態も予想されます。したがって、大規模修繕に要する費用を修繕積立金という形であらかじめ計画的に積み立てていくことが望ましいと考えられます。一方管理費は、通常の管理に要する経費として徴するものです。
■このため、管理費と修繕積立金は区分して経理することを、管理規約で明確に定める必要があります。

 修繕積立金の金額設定は「公平」「公正」原則です。

修繕積立金は近隣のマンションが10,000円だからうちのマンションは12,000円などというように適当に数値を当てはめて算定することはできません。修繕積立金の金額を設定するときは、各マンションごとに現状に即した長期修繕計画をきちんと作成した上で、計画に基づいて、個々のお部屋の専有面積の割合に基づき、公平・公正にその金額を設定していかなければなりません。

<マンション管理標準指針・修繕積立金の額>
標準的な対応として、「概ね、適切な長期修繕計画に基づいて算出される必要修繕積立金の負担割合に応じた額としている。(駐車場使用料等からの繰入金を含む。)」

■住戸当たりの修繕積立金の額は、長期修繕計画の見直しの際において、算出された必要修繕積立金(全期間)の負担割合に応じた額となります。つまり、計上された全期間の修繕工事費の累計額から、見直しの前年度末の修繕積立金の残高を差し引き、修繕工事のための借入金がある場合は見直しの前年度末の借入金の残高を加算すると、必要修繕積立金(全期間)が算出されます。この額を計画期間の月数で除し、各区分所有者の負担割合を乗じると、月当たり戸当たりの修繕積立金の額となります。

困難を伴う修繕積立金の改定作業

長期修繕計画を実際に有効なものとするためには、何よりも現在の修繕積立金の設定金額が妥当なのかどうかを適宜調査し、資金が足りないと判断された場合には、これを適切な水準に改定し直す必要があります。しかし、この修繕積立金の設定金額の見直し作業は、簡単ではありません。

マンション標準管理規約(国土交通省が作成した管理規約の雛形)や判例によると、修繕積立金の金額を改定しようとするとき、現在の修繕積立金の金額が規約に記載されている場合には「管理規約の改正」にあたるとされています。

この場合、各区分所有者の人数で4分の3、議決権総数でもそれぞれ4分の3以上の賛成票を獲得しないと議案が可決されず、結果として修繕積立金の金額改定ができません。(過半数の決議でOKな普通決議に対し、これを特別決議と言います)

また、修繕積立金の改定というものは実際の区分所有者のお財布に関わることですので、修繕積立金の設定金額を10,000円から12,000円に値上げするのであれば問題はないとしても、これを2倍、3倍にということになれば、反対意見も多くなり合意形成は難しいでしょう。

修繕積立金の見直しには確固とした意思と事前の準備が重要

しかし、マンションに修繕積立金が十分になく、必要な工事費を賄うことができないのであればこれは修繕積立金の値上げは致し方のないことです。資産価値の維持という観点からも、漏水が頻繁におこるマンションを放置はできません。管理組合の執行機関である理事会は、こうした事情を組合員にきちんと説明して、賛同が得られるように努め最終的には議案を決議しなければなりません。

しかし、そもそもいきなり修繕積立金の設定金額を2倍、あるいは3倍にしなければならないということは、当初から資金計画が破たんしていたとか、あるいはこれまで長期修繕計画の適切な見直しが行われてこなかったということであると言えるでしょう。

こういう無理をしなければならない状態に至る前に、長期修繕計画は国土交通省が推奨しているように、少なくとも5年ごとに見直しを行い、実態に即した内容となるようにしていかなければなりません。

マンション管理標準指針・長期修繕計画見直し時期

■長期修繕計画は、作成時点での25年程度の劣化の予測ですので、経年とともに状況が変化していくこともあり、予測と実態のズレによる見直しが必要となります。
■ついては、適切かつ効果的な修繕工事を行うために、5年程度ごとに、建物及び設備の調査・診断を行って、劣化状態、区分所有者等の要望、社会情勢の変化、修繕技術の進歩などについて把握し、これらについて十分な検討を行ったうえで、長期修繕計画を見直すことが必要です。
■見直しは、大規模修繕工事(周期12年程度)の前に、その大規模修繕工事の基本計画の作成と併せて行うこともありますし、大規模修繕工事の終了後にその結果を踏まえて行うこともあります。したがって、5年ごとが原則ですが、大規模修繕工事の実施時期により、見直しの時期を前倒し、又は先送りすることもあることから、「5年程度ごとに見直しを行っている。」を「標準的な対応」としています。
■なお、計画期間は、見直した時点から25年程度となるよう更新します。

マンション販売時の修繕積立金は低めに設定されています

多くのマンションにおいては、販売当初は修繕積立金が低めに設定さえる傾向にあります。マンションの販売主がマンションを売りやすくするため、あえて修繕積立金の金額を低めに設定して顧客に紹介しているのです。

このやり方は道義的な問題はありますが、しかしこれが即違法というわけではありません。多くの場合マンション購入の際には、不動産会社が、きちんと管理費や修繕積立金の額を説明しそれに基づいて顧客はマンションを購入し、オーナーとなっているからです。

マンションの資産価値の決め手は早期の資金計画の見直しにあり!

すなわち、竣工から少しでも早い時期に修繕積立金の見直しを行い、きちんと長期修繕計画を作成しているマンション管理組合は高い管理サービスを伴ったマンションとなります。

近年、築年数の経過した古いマンションで修繕積立金が十分に足りず、必要な修繕工事が行えずに苦しんでいるマンションが多数発生し、社会問題化しています。

マンションの資産価値を維持し、これを高めるためには、できる限り早い時期に修繕積立金の金額の見直しを行い、きちんと長期修繕計画を作成し、適宜これの見直しを図っていくことが重要なポイントです。

管理コストを削減し将来の修繕工事に備える実績豊富なマンション管理士事務所

管理費削減
マンション管理士による管理費削減サービスは、マンション管理会社への支払い額の削減や保険契約の見直しなどにより、管理費の削減を目指します。また、管理費コストを削減することにより、大規模修繕工事での一時負担金の発生や修繕積立金の値上げなどのリスクを軽減します。八重洲マンション管理士事務所は、経験豊富なマンション管理士が管理組合が負担している無駄なコストの削減を実現します。