マンションの専有部分については、専有部分の区分所有者がご自身の責任でこれを管理していくのは理解できます。専有部分の掃除や台所、浴室、給湯器などは、「専有部分」に該当しますので、専有部分の管理責任者つまり専有部分の区分所有者がこれを管理します。一方で、共用部分や敷地などの管理は区分所有者全員つまり管理組合でこれを管理していくことになります。しかし区分所有者全員でこれをおこなうのは現実的ではないので業務執行機関である理事会のが区分所有者を代表して共用部分の管理をおこなっていくのが原則です。しかし実際には管理の知識が乏しい理事だけで管理業務を行なうのは困難なことから、ほとんどのマンションでは管理会社に管理業務を委託しています。ここで問題になるのが管理の専門家ある管理会社と、管理の知識の乏しい管理組合による契約となるため、管理組合にとって不利な契約(管理会社にとって有利な契約)を知らないうちに締結していることが往々にして見受けられることです。こうしたリスクに備え、コストの問題はありますが、マンション管理士等のコンサルタントを顧問として活用することもひとつの方法です。多くの場合には、マンション管理士等のコンサルタントへの支払いコストは、管理コストの見直し効果などによりペイできることがほとんどです。

マンションの共用部分や敷地などの管理は、管理組合が管理会社に業務を委託しています。

管理費の徴収やら滞納者への督促業務、設備の維持管理から居住者同士のトラブルの仲裁まで、理事会の運営業務は多岐に及びます。普段、仕事をしているのに、自分たちの暮らすマンションの管理まで担いきれないそんな管理組合員の悲鳴が聞こえてきそうです。そこで、マンションの管理業務を専門に行う業者としてマンションの管理会社が必要となります。管理組合とマンション管理会社は「管理委託契約」というマンションの管理に関する契約を結び、そこで定められている内容に基づいて、マンション管理会社は管理組合が本来行うべき管理業務の一部を代行しています。

72.9%のマンションでは、管理会社に管理業務のすべてを委託しています。

平成25年度マンション総合調査によると、マンション管理会社に任せている業務は、基幹事務を含め管理事務の全てをマンション管理業者に委託しているが『72.9%』ともっとも多く、マンション管理組合が全ての管理事務を行っている自主管理マンションが『6.3%』となっており、ほとんどの分譲マンションで管理会社に業務を全部委託しており、管理会社に業務を依頼しない自主管理のマンションは極少数となっています。

管理組合とマンション管理会社が結ぶ管理委託契約は双方の合意に基づく

マンションの管理会社は実際にどういった業務を管理組合から請け負っているのでしょうか。当然ながら、管理委託契約は、管理組合と管理会社が個別に話合いを行い、双方の合意に基づいて契約が交わされるというのが原則です。しかし、契約の内容について一つ一つ、その業務について記載していくのは大変な作業となるでしょう。そこで、所管官庁である国土交通省はマンションの管理委託契約に関する雛形として、「マンション標準管理委託契約書」を作成し、これを公表しています。

実際には、ほとんどの場合委託契約書はマンション標準管理委託契約書をベースにしています

実務上、管理委託契約書の書面は管理会社が用意することが多いのですが、多くの管理会社では、この「標準管理委託契約書」をベースとして、その上で、マンション個別の事情については、この書面に加筆したり、修正したりというやり方で契約書を作成するのが一般的です。

<マンション標準管理委託契約書コメント>
この契約書は、典型的な住居専用の単棟型マンションに共通する管理事務に関する標準的な契約内容を定めたものであり、実際の契約書作成に当たっては、個々の状況や必要性に応じて内容の追加、修正を行いつつ活用されるべきものである。

<平成25年度マンション総合調査結果によると、マンション標準管理委託契約書について「概ね準拠している」が『88.8%』と最も多く、つづいて「一部準拠している」が『1.3%』、「全く準拠していない」が『1.5%』となっており、ほとんどのマンションで標準管理委託契約書に基づいた契約書を締結しています。一方で、マンションの管理委託契約の雛形である「標準管理委託契約書」と著しく内容の異なる契約書を締結しているマンションでは、どういった意図があるのか業務を委託しているマンション管理会社に確認する必要があるでしょう。

委託契約書がマンション標準管理委託契約書と比較して管理組合にとって不利な内容になっていないか確認しよう!

契約書の更新に関する記載

【マンション標準管理委託契約書】第21条(契約の更新)
甲又は乙は、本契約を更新しようとする場合、本契約の有効期間が満了する日の三月前までに、その相手方に対し、書面をもって、その旨を申し出るものとする。
2 本契約の更新について申出があった場合において、その有効期間が満了する日までに更新に関する協議がととのう見込みがないときは、甲及び乙は、本契約と同一の条件で、期間を定めて暫定契約を締結することができる。

契約書の解除に関する記載

【マンション標準管理委託契約書】第18条(契約の解除)
甲及び乙は、その相手方が、本契約に定められた義務の履行を怠った場合は、相当の期間を定めてその履行を催告し、相手方が当該期間内に、その義務を履行しないときは、本契約を解除することができる。この場合、甲又は乙は、その相手方に対し、損害賠償を請求することができる。
2 甲は、乙が次の各号のいずれかに該当するときは、本契約を解除することができる。
一 乙が銀行の取引を停止されたとき、若しくは破産、会社更生、民事再生の申立てをしたとき、又は乙が破産、会社更生、民事再生の申立てを受けたとき
二 乙が合併又は破産以外の事由により解散したとき
三 乙がマンション管理業の登録の取消しの処分を受けたとき

【マンション標準管理委託契約書】第19条(解約の申入れ)
前条の規定にかかわらず、甲及び乙は、その相手方に対し、少なくとも三月前に書面で解約の申入れを行うことにより、本契約を終了させることができる。

管理費等滞納者に対する督促に関する記載

【マンション標準管理委託契約書】別表第1(事務管理業務)

② 管理費等滞納者に対する督促 一 毎月、甲の組合員の管理費等の滞納状況を、甲に報告する。二 甲の組合員が管理費等を滞納したときは、最初の支払期限から起算して○月の間、電話若しくは自宅訪問又は督促状の方法により、その支払の督促を行う。

三 二の方法により督促しても甲の組合員がなお滞納管理費等を支払わないときは、乙はその業務を終了する。

緊急時の対応に関する記載

コメントにあるように、マンションの地域性や設備に併せて追記されている必要があります。例えば、河川の側で台風のときに、機械式駐車場が浸水する危険性が高い場合にはその対応について具体的に記載する方が望ましいでしょう。

【マンション標準管理委託契約書】第8条(緊急時の業務)
乙は、第3条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる災害又は事故等の事由により、甲のために、緊急に行う必要がある業務で、甲の承認を受ける時間的な余裕がないものについては、甲の承認を受けないで実施することができる。この場合において、乙は、速やかに、書面をもって、その業務の内容及びその実施に要した費用の額を甲に通知しなければならない。
一 地震、台風、突風、集中豪雨、落雷、雪、噴火、ひょう、あられ等
二 火災、漏水、破裂、爆発、物の飛来若しくは落下又は衝突、犯罪等
2 甲は、乙が前項の業務を遂行する上でやむを得ず支出した費用については、速やかに、乙に支払わなければならない。ただし、乙の責めによる事故等の場合はこの限りでない。
ー コメント ー
第8条関係
① 本条で想定する災害又は事故等とは、天災地変による災害、漏水又は火災等の偶発的な事故等をいい、事前に事故等の発生を予測することが極めて困難なものをいう。
② 第1号及び第2号に規定する災害及び事故の例等については、当該マンションの地域性、設備の状況等に応じて、内容の追加・修正等を行うものとする。

トラブルを避けるために必ず読んでおこう「管理委託契約書」

管理組合とマンション管理会社とのトラブルで多く見られるケースに、この管理委託契約の履行に関する問題があります。管理会社が契約に定められた内容をきちんと履行していない!(これを民法では「債務不履行」といいます)という問題です。責任の所在を明確にするには、管理組合と管理会社の双方が契約の内容(つまり管理委託契約書に記載されている内容)について、きちんと理解していることが全ての前提となります。

管理組合の側では当然管理会社の仕事!と思い込んでいる業務の内容が、実は契約の範囲外(つまり管理委託契約書に記載されていない)ということが往々にしてあります。こういった誤解を避けるためにも、管理組合の側ではキチンと契約書に記載されている内容を読み込むことが大切ですし、管理会社の側でも予め契約更新の機会などを通じて、丁寧に契約内容について説明を行うことが重要です。

マンション管理士等の専門家による管理会社の業務チェック

管理委託契約書の確認が必要と述べましたが、実際には管理委託契約書の内容は複雑で、マンション管理の知識の乏しい理事がその内容を精査するのは簡単ではありません。そこで、多くのマンション管理士やマンション管理士事務所が管理委託契約書のチェックや管理会社の業務監査をサービスとして提供していますので、こうしたサービスを利用されるのもひとつの方法です。