マンションになくてはならない重要な設備の一つに「エレベーター設備」があります。エレベーター設備は70戸くらいまでの中小規模のマンションで、大体1基、それ以上の大型マンションや高層マンション、高級マンションだと、複数基備え付けられているマンションもあります。今回は、このマンションに不可欠のエレベーター設備について、点検制度の概要や維持・管理に関する注意点などを見ていきます。

分譲マンションでのエレベーターの有無及び基数

平成25年度マンション総合調査によると、エレベーターが設置されているマンションが『87.4%』、エレベーターがないマンションが 『9.7%』となっています。

マンションに設置されているエレベーターの数は「1基」が『57.9%』と最も多くなっています。

エレベーターの法定点検/マンション管理

マンションに備え付けられているエレベーター設備は、建築基準法の規定により、年1回の法定点検が義務付けられています。車にも車検があるように、エレベーターにも建築基準法12条3項により「定期検査」をおこなって検査結果を特定行政庁におこなうことが義務付けられています。

そして、法定検査が行われた後は、「検査済証」と呼ばれるステッカーを「かご」の中の見やすい場所に掲示するルールになっています。これにより、きちんと法定点検が行われていることを、居住者をはじめとした誰もが目視で確認できるようにしています。

既にマンションで暮らしておられる方は「かご」に乗ったとき、この「検査済証」というステッカーを探してみると良いでしょう。ステッカーが貼ってないなんて場合には、至急、管理を委託している管理会社に問い合わせをしましょう。

建築基準法第12条3項(報告、検査等)
昇降機及び第六条第一項第一号に掲げる建築物その他第一項の政令で定める建築物の昇降機以外の建築設備(国、都道府県及び建築主事を置く市町村の建築物に設けるものを除く。)で特定行政庁が指定するものの所有者は、当該建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者に検査(当該建築設備についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含む。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。

エレベーターの日常点検/マンション管理

また、法定点検とは別に(財)日本建築設備昇降機センター発行の「昇降機の維持及び運行の管理に関する指針」に基づいてエレベーター保守会社が通常、1ヶ月に1回の点検を実施しています。最近では. 多くのエレベーター保守管理会社が、遠隔監視システムを採用しており、保守技術員が実際に現地へ出向いて行う点検は2ヶ月~3ヶ月に1回程度が多くなってきました。

エレベーターの日常点検のあり方はマンションごとに異なります。販売当初からの点検方法をそのまま踏襲しているケースが多いですが、費用の節減を目的にこれを見直して、点検の頻度を毎月から隔月、3ヶ月に1回などというように減らしているケースも少なくありません。

また、遠隔監視の技術の進歩により、リモートコントロールによる点検を月1回、作業員による実地の点検は3ヶ月ごとなどというように、複数の点検方法を組み合わせる方法が主流となってきています。

昇降機の維持及び運行の管理に関する指針
所有者等は、昇降機の維持及び運行の安全を確保するため、使用頻度等に応じて専門技術者に、おおむね1月以内ごとに、点検その他必要な整備又は補修を行わせるものとする。

外国のメーカーであるシンドラー製のエレベーターによる死亡事故は記憶に新しいところです。管理費の節減のため、エレベーターの日常点検の回数などを減らすなどという方法が採用される場合がありますが、リスクマネジメントという観点から好ましいことではないでしょう。

エレベーターの点検費用は、確かに決して安くはありませんので、コスト削減の対象となりやすいところではあるのですが、住人の安全に直結する部分ですので、慎重に検討した方が良いでしょう。

エレベーターの日常点検費がどうしても高いと感じられる場合は、管理組合の懐事情を率直に話し、点検の頻度はそのままに、費用の純減という形で対応できないか、まずは、管理会社やエレベーター保守会社に協力を求めてみましょう。意外とそれだけで削減に応じていただけるケースが数多くありました。

マンション管理士とは?

マンション管理士は、マンションの区分所有者や理事会などの相談に応じて適切なアドバイスや支援等のコンサルティング業務を行うのが仕事です。マンション管理士は、法律や管理の専門知識をもって、マンションの維持管理に関して、マンション管理のスペシャリストとして、管理組合の立場にたってマンション管理に関する様々な問題の解決をサポートします。

エレベーターの二つの契約形態「POG契約」と「フルメンテナンス契約」とは‥!?

エレベーターのメンテナンスに関する契約形態には、「(POG)契約」と「フルメンテナンス契約(FM)」という二つの契約形態があります。

点検作業を始めとして、給油や部品の調整作業、消耗品の交換などは、どちらの契約形態を採用していても、契約の範囲に含まれますので、これらの作業を実施することによって、別料金が新たに発生するということはありません。

それでは、二つの契約形態で何が異なるのかと言うと、それは「部品の修理や交換」の必要が生じた場合であって、これが別料金となるのが「POG契約」であり、契約に範囲内に含まれるのが「フルメンテナンス契約」ということになります。

当然のことですが、契約に要する費用は、POG契約は割安になりますし、フルメンテナンス契約は保障が手厚いですので、その分割高となります。一般的な分譲マンションでは、フルメンテナンス契約を採用しているケースが多いでしょう。

しかしエレベーターの耐用年数は30年程度であり、当然、新しいうちはあまり故障がありません。そこで、さほど年数が経っていないマンションではPOG契約に切り替えるのもひとつの選択肢と検討してもよいでしょう。

エレベーター保守・点検業務標準契約書(用語の定義)
第2条 本契約書において用いる用語の定義は、次のとおりとする。
「フルメンテナンス契約」とは、定期的な機器・装置の保守・点検を行うことに加え、点 検結果に基づく合理的な判断のもと、劣化した部品の取替えや修理等を行う契約方式をい う。 (4) 「POG 契約」とは、「Parts・Oil・Grease」の略で、定期的な機器・装置の保守・点検の みを行う契約方式で、劣化した部品の取替えや修理等を含まないものをいう。

メーカー系エレベーター保守会社と独立系エレベーター保守会社の違いとは?

メーカー系エレベーター保守会社とは、東芝、三菱、日立、等のメーカー系列に属している保守会社であり、独立系メンテナンス会社はそういったエレベーターメーカーには、属せずに、すべてのメーカーのエレベーターのメンテナンスをおこなっている会社です。独立系保守会社はもともとメーカー系保守会社の下請けだったことが多いようです。

独立系エレベーター保守会社に切り替える一番のメリットは、なんといっても、メンテナンス費用を大幅に削減できることです。独立系エレベーター保守会社はエレベーターのメンテナンスや保守点検を主業務にしていますので、メーカー系では必要な「開発」に掛かる人件費や「製造」等の費用が掛からない為、保守、メンテナンス専門で行っている独立系の保守会社はコスト面では管理組合にとってのメリットとなります。

国土交通省から、保守点検業者の選定にあたって留意すべき事項等を取りまとめた「昇降機の適切な維持管理に関する指針」が平成28年2月に公表されましたので、エレベーター保守会社の変更を管理組合で検討される場合には参考になる資料です。

昇降機の適切な維持管理に関する指針

第三章 保守点検業者の選定に当たって留意すべき事項
第1 保守点検業者の選定の考え方
第一章第1の目的を達するためには、昇降機に関する豊富な知識及び実務経験に裏打ちされた技術力を有する者による適切な保守・点検が必要不可欠であることから、所有者は、保守点検業者の選定に当たって、価格のみによって決定するのではなく、必要とする情報の提供を保守点検業者に求め、専門技術者の能力、同型又は類似の昇降機の業務実績その他の業務遂行能力等を総合的に評価するものとする。

主なメーカー系と独立系エレベーター保守会社一覧

<主なメーカー系列のエレベーター保守会社>
三菱電機ビルテクノサービス株式会社
株式会社日立ビルシステム
東芝エレベータ株式会社
日本オーチス・エレベータ株式会社
フジテック株式会社

<主な独立系エレベーター保守会社>
エス・イー・シーエレベーター株式会社
ジャパンエレベーターサービス株式会社
阪神輸送機株式会社
日本昇降機株式会社
京都エレベータ株式会社
株式会社自強輸送機

定期検査で指摘される既存不適格とは

年1回の定期検査で「既存不適格」と指摘されることがあります。現時点で存在している建築物は、建築された 当時の法令に基づいて建築されています。そのため、建築基準法令が改正されると、新しい法規に適合しないことがあります。その場合、現時点の建築物(既存建築物)は 、新たに定められた法令の規定が適用されません。これを既存不適格とよびます。なお、現在、使用しているエレベーターは引き続き使用することができますが確認申請を必要とするエレベーターの改修等の際には、現行法令に適合することが求められます。

マンションの一階でエレベーターを使わないから管理費の負担が少なくて良い?

管理費用の負担は、規約に別段の定めがない限り、共用部分に対する各区分所有者の「持分に応じて」、分担されると区分所有法で定められています。エレベーターの管理経費を持分ではなく使用頻度を基準することは実際問題として使用頻度を正確に計測することは不可能です。よって、エレベーターを使わない1階の区分所有者であっても、エレベーターの管理経費を免除されることはありません。

【区分所有法】第1章[建物の区分所有]第2節[共用部分等]第19条(共用部分の負担及び利益収取)
各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。

エレベーターに乗っている時に地震が起きた場合の対応

  1. 揺れを感じたら、行先階のボタンをすべて押す
    揺れを感じると最寄階で自動的に停止する安全装置がついたエレベーターもありますが、利用中の方もご自身で “すべての” 行先階ボタンを押し、最初に停止した階で降りる。
  2. エレベーターの中の状況をインターホンで通報
    無理に脱出をしようとすると大変危険です。エレベーターは必ず外部と連絡がとれるような装置(インターホン)がついていますので、状況を正確に通報し、救助を待つ。
  3. 停電してもあわてない
    地震とともに停電が発生した場合は、ただちに非常用バッテリーが起動して非常用照明が点灯します。カゴ内がまっ暗になることはありませんので、落ち着いて外部と連絡をとり救出を待つ。

一般社団法人日本エレベーター協会ホームページより抜粋

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